すごい勢いで株価が上昇していると思ったので、買いを入れたら値段が下がってきた、逆に価格が急に下がってきたので損切りをしたところ、今度は値段が戻ってきたということはありませんか。


ポジションを入れた瞬間に予測と反対の動きをする、まるで誰かが株価を操作しているかのように値が動くことがあります。


大口の機関投資家や証券会社の自己売買部門のディーラー、ファンドマネジャー、仕手筋などは、あらゆる手段を使って個人投資家に揺さぶりをかけることがあるのです。そこで、その手口に引っかからないための対策をご紹介したいと思います。


機関投資家に負けない方法





デイトレードとスイングトレードの違い

まず、デイトレードとスイングトレードの違いを見てみましょう。デイトレードは、取引時間内に取引きを終了させて、次の日に持ち越さない手法になり、その中でも数秒から長くても数分で終わらせる手法はスキャルピングと呼びます。


その一方、数日から数週間(数か月)にかけて取引きするのがスイングトレードです。完璧なトレードスタイルは存在しないので、確かにどちらにも一長一短あります。ただ、2つを比べてみるとスイングトレードに比べデイトレードは、不利になる条件がいくつも揃っています。


一般的に「損失は早く切り、利益は伸ばす」というのがトレードで勝つための条件です。しかし、デイトレードの場合、利益を伸ばすのに限界があります。


というのは、株式取引には値幅制限が設けられているからです。急激に価格が上昇すれば「ストップ高」になりますし、逆に下落すれば「ストップ安」になります。言い換えれば、デイトレで継続して勝つためには、勝率を上げなければなりません。


しかしプロのトレーダーでも、勝率が4割あればすごいといわれているくらいですから、これは厳しいです。YAHOOファイナンスには、「プロが選ぶチャンス銘柄」が出ていて、プロたちの勝率を確認することが出来ます。これをみると勝率がすごく高い人でもおよそ6割、ほとんどの人が4割から5割程度の的中率なんですね。


超高速取引きHFT

IBM-Supercomputer

出典:httpss://www.vesbolt.com

瞬間的に1万回近い注文を出せる超高速取引(HFT)があります。今やHFTを利用しない機関投資家はいないくらいなので、このことを考えても短期戦で個人投資家が大口の投資家に敵う余地は、まずないといっても過言ではないでしょう。


HFTの取引きにはいろいろありますが、「マーケット・メーカー戦略」が大半を占めているようです。どのような手法かと言えば、市場にでている注文に対し、自分が注文するのではなく、あらかじめ注文を仕込んで他の投資家の注文を待つ手法です。


例えば、ひとつの銘柄に100円の指値買いと101円の指値売りをそれぞれ100株づつ同時に注文したとしましょう。買い指値注文と売り指値注文の全てが約定すれば、1万円(100円X100株)を支払って1万100円(100円X101株)を受け取ることになるので、100円の利益になります。


HFTを使えばこれを超高速でひたすら繰り返すことが出来ます。確かに一度に得る利益はほんのわずかになりますが、失敗の少ない取引きです。


また、ほかの方法としては、同じ業種間で連動する銘柄を利用することです。仮に一つの銘柄が下落した場合、他の銘柄といずれ同じ動きになることを見越して、連続的に買いを入れ、値が戻ったところで売り抜けて利益を確定します。


いわば銘柄間の裁定取引ですが、HFTはこのわずかな差を瞬時に見つけ、多量に売買することができます。日本株でもHFTが占める割合は6割近くになり、東証・売買審査部によると、相場を操縦するような取引きは1日当たり数百件に上るそうです。


ならばHFTが万能なのかというと、そうではありません。というのは近年、期待通りの利益水準がでていません。過去5年間で「1237勝1敗」という驚異の勝率をたたき出したこともあるHFT大手の米バーチュ・フィナンシャルでさえ、華々しいリターンを上げているわけではないのです。


というのは競合が増え、競争が激化してきたことによって、相手を出し抜けるチャンスが激減しているからです。HFTの相手はHFTということになり、業界内での合併が進むのではないかとの予測さえあります。


HFTが設置されているのはコロケーションエリアになります。コロケーションとは、東証の売買システムのすぐそばに機関投資家や証券会社のサーバーを設置して、直接にケーブルでつなぐサービスのことです。


売買システムとサーバーとの物理的な距離を縮めて発注する速度を高速化しています。利用料金は1ヵ月あたり70~80万円くらいで、それを東証に支払いラックを借りてサーバーを設置します。


東京市場でHFTを使って取り引きをしている投資家の正確な数は、把握しきれていないものの、コロケーションエリアのラックは、ほとんど契約済みとなっているので、少なからずある程度の数に上るのは確かです。


コロケーションを導入すると売買スピードの格差は確実に広がります。コロケーションを利用していない一般の投資家が自宅のパソコンから発注した場合とコロケーションを利用した場合を比べると、その速度差はなんと200倍も違ってきます。


このことから相場を不平等に操縦することは法律的に禁止されていますが、現に操縦できる人は存在しますし、HFTの機能は限りなく黒に近いグレーゾーンといえるのではないでしょうか。


株式取引は複数の人がお互いに影響しあう場所であり、全員の利得の総和がいつもゼロになります。つまり、株式とはゼロサムゲームなんですね。


また、有利な条件を備えているほうが勝てるというのもゼロサムゲームの特徴です。このため、個人投資家が超高速取引に挑んでも勝負は最初からついています。


デイトレードで失敗するもう一つのわけ

その代表的な手口が「見せ玉」です。資金に恵まれている機関投資家やヘッジファンド、証券会社が、板に大きな注文をだして、株価を自分たちに有利な方向へ吊り上げたり吊り下げたりする手口です。


通常、証券会社には「流動性の提供」という業務があるので、その目的のために「板」を並べていることもあります。しかし、悪用しようと思えばそれは可能なので、個人投資家を精神的に翻弄させることもできます。


06年のライブドア事件のあと、この「見せ玉」が国会で話題となりました。従来の法律ではこの問題は放置されていましたが、証券会社が『見せ玉』行為をした場合、刑事罰と課徴金を課すことが規定されました。


法律が改訂されたことからもわかるように、証券会社の自己売買部門の担当者が「見せ玉」行為を頻繁に行っていたのは確かなことです。


大口投資家に負けないたった一つの方法

この道のプロが操作している場合、それを見抜くのは簡単なことではありません。ただしダマシのテクニックを勉強してみるのはいいことだと思います。


しかしそのテクニックは何通りもあるので、相手の戦術を見抜けるようになるまではかなりの時間がかかるのではないでしょうか。


そこでダマシに合わないためにとれる対策として考えられるのは、スキャルピングを含むデイトレードからスイングトレードに手法を変えることです。


株を保有しなくてはならない時間が長くなれば、それだけ莫大な資金が必要になるので、相場を操縦することが困難になります。つまり、短期のトレードの場合、大口投資家の影響を受けやすくなり、トレード期間が長くなるほど、それを回避できるわけです。


ただしその期間もそれほど長くは続かないと思います。というのは、人工頭脳が誕生した今、大口投資家は莫大な資産をつかい優秀なAIを購入して株の取り引きを開始したからです。


近い将来、資金に乏しい個人投資家が勝てるすべはほぼなくなるでしょう。ただし、AIの予想はまだ完璧というわけではないので、少ない資産で株に投資するなら、ここ数年が勝負になるかと思います。